海外企業調査

公開記録について

我々は多くの情報を一般に開示されている公文書から入手し、こういった情報は企業や個人の全体像を導く貴重な資料となります。特にアメリカでは多くの情報が公開されているため「誰でも入手出来る情報なんて」と、公開情報を過小評価したり、公開情報は誰でも簡単に入手出来ると考えていらっしゃる方も多いようです。

しかし、実際には「公開記録=誰でも簡単に入手出来る記録」ではありません。アメリカでは公開記録の多くを州や郡が保有しており、その種類や入手条件は管轄によって異なり、また極めて複雑に絡み合っています。多くのベンダーも存在していますが、使ってみれば分かりますが、想像とは随分と違い、情報不足、ミスの多さに驚かされます。役所のずさんさもアメリカならではと言えます。

例えばロスアンジェルス郡における古い訴訟記録を調べるとしましょう。まず索引から案件番号を特定し、そのファイルが保管されている場所へ出向きます。通常、古いファイルは公文書館に保管されていますから、公文書館で調査を行います。ところがあるはずのファイルがない、地域の裁判所に保管されたままだと言われてそこに問い合わせてみても、ファイルは公文書館にあるはずだと言われる。または弁護士がファイルを持ち出したままになっていると言われる、タイプミス、苗字と名前が逆になっている等々、実際に記録の入手を行ってみると、公開情報から的確に目的の情報へ辿り着くことがいかに大変なことか良く分かります。また、やっとのことで入手された記録も専門用語(もちろん英語)でびっしりと書かれており、求めている情報を探し出すだけでも容易ではありません。

公開記録は「煩雑に転がっている」記録であり、「情報の活用を目的として整理された」記録ではありません。従って、信頼出来る情報を効率よく入手するためには、専門家の手助けが不可欠です。また、インテリジェンスという側面から考えた場合、単に情報を入手しただけでは何の意味もありません。その情報が何を意味しているのか、他の情報と照らし合わせながら全体像を正確に導く分析作業が非常に重要なのです。

CIAが入手する情報の80%以上は公開情報と言われています。世界屈指の諜報機関がその情報のほとんどを公開記録から得ているということは何を意味しているのでしょうか?情報の在りかを的確に特定する能力、信頼性の高い情報を選択する能力、そして収集された情報を総合的に分析する能力がインテリジェンスにとって最も重要ということです。