2012/1/17 火曜日
不法手口による違法滞在
海外で生活をされたことのない方はピンとこないかもしれないが、観光を目的とした短期滞在と違い、海外、特にアメリカで生活をすることは簡単なことではない。当然だが、我々はアメリカでは外国人であり、外国人が他国で生活するには、査証(渡航・滞在許可証)が必要だからである。よく、引退後はハワイで余生を過ごしたいという話を耳にするが、残念なことに、そういった夢を諦めなければならない人も少なくない。
査証があるからといって、何の制限もなく生活ができるというわけではない。観光のみを目的としたもの、学校に通うことはできるが、就労はできないもの、特定の会社でしか働くことができないもの、雇用主の制限はないが、有効期限に制限あるもの等々、査証には様々な種類がある。この範囲を超えて生活をすれば、違法ということになる。
テロの問題もあり、アメリカで査証を得ることは益々難しくなってきている。そこで皆、あれこれと抜け道を考える。まずは観光査証の複数利用。比較的審査のハードルが低い「観光訪米」を繰り返すことにより、実質的な長期滞在を実現させようというものだ。ただ、移民局もこの辺りの事情をよく把握していて、一定期間に何度も出入国を繰り返している者は再入国を拒否されることになる。
そして職種の偽装。移民法は弁護士でも混乱する分野なので、詳細や一般的ではないケースは割愛するが、普通、アメリカで就労査証を得るためには、その職種がアメリカ人の雇用機会を奪うものではなく、かつ専門的なものでなければならない。ありがちなケースはこのようなもの。例えば、アメリカの日系企業が受付兼電話番として人材を求めているとする。日系コミュニティー向けにビジネスを営んでいるので、やはり日本語を完璧に理解できる日本人が好ましい。ところが、受付担当ということでは専門職とみなされない。そこで、査証上は「会計スペシャリスト」ということにしておいて、実際には受付担当として就労させるというものである。
移民局が社内部のことなど知る術はないだろう・・・と高をくくるのだろうが、彼らを甘く見てはいけない。顧客のふりをして電話をしたり、突然会社を訪問して名詞や仕事の資料の提示を求めたり、様々な方法で実態を確認しようとする。どこからか社の内報を入手することすらある。査証上「会計スペシャリスト」ということになっている従業員が新人として内報で紹介されていて、そこでの肩書きが「受付担当」ということになっていれば、移民局は捜査を開始する。
公開情報も移民局が好む情報ソースである。ホームページに掲載されている従業員の集合写真なども定期的にチェックされている。それからソーシャルネットワーキングサイト。ある営利団体が情報公開法によって得た移民局の内部通達資料では、不法滞在が疑われる者の情報をソーシャルネットワーキングサイトを通じて入手する方法が推奨されている。身分を伏せた上で友人登録させ、日々の様子を探るのだ。この方法は偽装結婚による査証の不正入手にも効果があるとのこと。アメリカ人との婚姻により査証を得たはずなのに、ソーシャルネットワーキングサイトにおいて、ボーイフレンドとされる別の男性と写った写真が掲載されていたりすれば、捜査の対象になるらしい。
このご時勢、ネット社会でのロープロファイルは不可欠なのかもしれない。

ロス・アンジェルスで活躍する日本人探偵。トラブルシューター。アメリカの大学院を卒業後、米国私立探偵ライセンス、米国公認不正検査士資格を取得。海外調査、犯罪対策、各種カウンセリングを含め、国際的な調査案件を数多く手掛ける。