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調査コラム

2010/8/31 火曜日

指紋の話

Filed under: 調査コラム — yamaga @ 9:00:20

昔から、容疑者を特定する方法として、指紋照合が行われている。以前、こちらでこんな事件があった。麻薬取引に関係しているある犯罪者が、外科医に頼み、足指の皮を指に移植して指紋を変えようとし、外科医と併せて逮捕されたというものだった。
 
また、他人の指紋を使って不法入国しようとしたという似たような事件も日本で報告されている。
 
刑事ドラマでもお馴染みの指紋。渦巻型とか、弓状型とか、一見しただけでもいくつかの種類があることに気付くが、実際、どうやって照合が行われるのか、ご存知だろうか?
 
指先を良く観察してみると、いくつもの線がぎっしりと表皮に詰まっており、各線が交わったり、分岐したり、点状になっていたり、二重になって縞状の模様を形成したり、途切れていたりしていることが分かる。指紋鑑定の際にポイントとなるのは、基本的に線や形状ではなく、「Ridge Ending(終始点または開始点)」や「Bifurcation(分岐点または接合点)」といった点である。

 fingerprint.png
 
抽出されたこれらの点の位置を比較することによって、鑑定は行われる。よく、刑事事件の裁判を傍聴すると、検察官が容疑者の指紋と犯人の指紋を大きなパネルに貼り付け、陪審員に説明しているのを見掛けることがあるが、これは、「Ridge Ending」と「Bifurcation」の位置を一つずつ示しながら、同じ場所に位置している、つまり同一人物の指紋であるということを説明しているのである。
 
当然ながら、合致する点の数が多ければ多い程、比較される二つの指紋が同一である可能性は高まる。アメリカでは、一般的に、二つの指紋が同一であることを示すためには、10箇所以上の合致は必要なく、7,8、9程度で十分であるとされている。ヨーロッパでは、12箇所における点の合致が必要とされることもあるらしい。
 
比較されている二つの指紋が同じものならば、必ず12以上の合致点が見つかるのでは?とお感じになる方もいらっしゃるかもしれないが、実際の捜査ではそう上手くはいかない。犯罪現場で収集される指紋というのは不完全であったり、部分的であることが多いからである。
 
ちなみに、掌や足指の指紋についても、貴重な証拠として採取、照合されることもある。
 
冒頭で、指先の皮を付け替えることによって指紋を変えようとする手口について触れた。私は生体学の専門家ではないので、100%定かではないが、こういった試みは、一時的には効果があるかもしれないが、すぐに生来の指紋に戻ってしまうものと思われる。ご周知の通り、私達の体皮は代謝によって常に入れ替わっており、指紋というのは、指の根深い細胞組織によって形成されるものだからだ。
 
普段、特に気に留めることもない自分の指先だが、こうして指紋について考えてみると、何とも奥深いものである。

2010/8/18 水曜日

保安官の汚職

Filed under: 調査コラム — yamaga @ 7:41:09

先日、地方選挙があった。このコラムでも何度か触れているが、こちらでは、自分達の住む街は自分達で守るという意識が高く、警察というのは、市民によって治安維持業務を委託されている機関にすぎないという考え方が根強くある。従って、保安官局のトップは、投票によって選出されることになっている。
 
ロスアンジェルスに隣地するオレンジ郡は、治安も良く、裕福な階層が住む場所として知られている。この郡を管轄する保安官の選出は、今回の選挙における注目の一つだった。それは、少し前に、マイク・カローナという保安官のトップが汚職で逮捕されたからである。
 
カローナ氏は、金銭やスポーツのチケットを含む贈与品を多く受け取っていたそうだ。元々、カローナ氏は政治家志向が強く、将来的な政治活動のための資金集めという背景があったらしい。
 
その見返りとして、カローナ氏は銃の携帯ライセンスや警察のバッジ等をその資格のない一般市民である「支援者」に交付するなど、保安官としての地位を利用して便宜を図っていたとのこと。
 
ただ、保安官として選出されてからというもの、カローナ氏には悪い噂が絶えず、連邦政府の捜査官によって目を付けられていた。
 
 
決め手となったのは、カローナ氏の不正活動に関与していた側近人物が捜査局側に寝返ったこと。この側近人物は隠しマイクを付け、カローナ氏と接触。疑惑の資金や発覚を避けるための工作、裁判の可能性について語る様子を録音したのである。当初、カローナ氏は、一切の容疑を否認していたのだが、検察側は最後に切り札としてこの録音証拠を提出。カローナ氏もついに観念したのだった。
 
現在、カローナ氏側は控訴しているが、厳しい状況だろう。
 
つい数日前にも、ロス市長にも似たような疑惑が持ち上がった。野球など、スポーツのチケットを無償で受け取り、その提供者に関する記録がないというものだ。これについては、市長側は、スポーツ観戦も仕事の一つという見解を示している。
 
余談だが、元警察官が不正に手を染め、刑務所に入るとどうなるか?容易に想像できることではあるが、他の受刑者から目の敵にされ、大変なことになるらしい。現時点では、カローナ氏は66ヶ月の収監を命じられている。
 
今後、裁判の行方が気になるところである。

2010/8/9 月曜日

クレジットカード情報の盗難3

Filed under: 調査コラム — yamaga @ 0:35:29

その他、カード会社が不正使用を疑うポイントの一つは、カードの使用場所である。例えば、私が家の近く、つまり、カリフォルニア州のコンビニで買い物をしたとする。その数分後にニューヨーク州のレストランで私のカードによって支払いがなされ、その一時間後に英国でカードが使われたとすれば、怪しいということになる。当然だが、カリフォルニアからニューヨークまでを数分で、ニューヨークから英国までを一時間で移動することは不可能だからである。先日、出張でメキシコ国境に近い街、サンディエゴ(昔、映画「トップガン」の舞台になった場所)に行き、カードを使ってガソリンを購入したところ、カード会社から確認の電話があった。ロスアンジェルスを拠点としている私のカードが遠隔地で使われたため、不正の疑いがあったからだそうだ。
 
また、これまでの記録からカード使用者の購入傾向や趣向、使用頻度を分析し、その範囲から外れるものについては、不正使用の疑いありと判断されることもあるらしい。これまで、立て続けてカードで買い物をしたり、初めてのサイトでネットショッピングをしたりしたときに、カード会社から確認の電話を受けたことがある。
 
併せて、カードを読み取り機に通した回数も不正使用を探知する要因の一つらしい。以前、あるスーパーでカードを使った際に、読み取りが上手く機能せず、何度かカードを通したことがあった。あのときも、カード会社から確認の電話を受けたことを覚えている。これは、前々回に触れたように、レストランのウェイターがカード情報を盗むために、自分で持ち込んだ読み取り機に客のカードを通す手口を想定してのことである。
 
さて、これまで、カードの不正使用に気付く発端となるのは、カード会社の不正防止部署が兆候を察知し、確認の電話連絡を受けることであると述べた。
 
ところが、電話に出ることができなければ、不正使用に気付くこともなく、犯罪者がカードの不正利用を続けることができる期間も長くなってしまう。そして、これに目を付けた犯罪者によって、最近は、こんな手口が流行っている。まず、カードを不正使用する前に、ターゲットとなる者の電話ラインにいわゆるDoS攻撃をかける。内容はセールスなどの取るに足らない録音電話で、次第に被害者は電話を無視するようになったり、電話番号を変えるようになる。そして、被害者がカード会社からの警告電話を受けることができない状態を作っておいてから、カードの不正使用を始めるのである。この手口は銀行口座の不正利用においてもよく使われているものである。
 
日常生活にクレジットカードは不可欠であり、カードを使う以上、不正利用を100%防ぐことはできない。それは、私達はカード決済者の行動をコントロールすることができないからである。不正使用を素早く察知し、適切な対応をすることが大切ということだろう。

2010/8/5 木曜日

クレジットカード情報の盗難2

Filed under: 調査コラム — yamaga @ 10:32:10

アメリカでは、どうしてもクレジットカードを使う機会が多くなる。別にカードを使わなくとも生活に支障をきたすわけではないが、私がクレジットカード、しかも見栄を張ってあえて某社のゴールドカードを使っている理由の一つは、「信用」である。多種多様の人種が混在しているこの国では、初対面の相手に対しては警戒しがちだ。カードを使うことによって、少なくとも私が経済的に不安定ではないこと、怪しい人間ではないことを示し、より良いサービスを受けるためにカードを使うのである。
 
前回触れた通り、クレジットカード情報の盗難は有名店やチェーン店であっても起こり得るし、私はカードを使う機会が非常に多いので、いつか私の身にも降りかかるのではないかなと思っていたら、先日、それが現実のものとなってしまった。
 
ある午後、カード会社から電話がきたのだが、セールスコールに違いないと無視していたら、翌朝、今度はメールが届いた。内容は、メーシーズ(アメリカの大手デパート)で800ドルの買い物をしたことになっているが、間違いないかというもの。全く身に覚えがなく、すぐにカード会社に問い合わせをしてみると、他にもいくつかの不審なチャージがあるようだった。
 
こんなこともあろうかと、不正対策に評判の良いカードを持っていたことが幸いした。電話一本で(私にとっては)全て解決。新しい番号のカードがすぐに発行され、不正使用分については、明細書に記載されることすらなかった。
 
クレジットカードの不正使用を100%防ぐには、カードを一切使わず、多額のキャッシュを持ち歩くしかない。私の場合、強盗に遭ってキャッシュを奪われるリスクとカードの不正使用の被害者になった際、その処理にかかる手間や労力を天秤にかけ、カードを使い続けることを選んだ。
 
各カード会社には不正使用を検知するための部署が設置されており、不審なカード使用を監視している。せっかくの機会なので、そういった不正検知担当者に話しを聞いてみたり、自身の状況を観察してみたところ、いくつか興味深いことが分かった。
 
まず、本格的な不正使用の前に、小額のチャージが見られること。私の場合、あるスーパーで1ドルだけ買い物がなされていた。もちろん、これは私が使用したものではない。犯罪者達は、カード情報を盗んだ後、そのカードがまだ「生きている」かどうかを確認するためにテストをするのだろう。1ドル程度のチャージなら、警戒されてカードがクローズされてしまうことはないからである。(次回へ続く)

2010/7/21 水曜日

クレジットカード情報の盗難1

Filed under: 調査コラム — yamaga @ 8:08:24

クレジットカード情報の盗難事件は後を絶たない。
 
手口としては、単純にカードの情報を書き取るものから、専用の装置を使って磁気情報を読み取るものまで様々だが、カード情報を抜き取るための装置も今はインターネットでいくらでも見つけることができ、犯罪者にとって好都合な環境は当分変わりそうもない。
 
ACFE会員の方にとっては、お馴染みの手口だとは思うが、今日(6月29日)、こんな記事を見かけた。ある犯罪グループが、架空の会社を使い、100万人分以上のクレジットカードのそれぞれに10ドル以下の小額を不正にチャージするという方法で、数年かけて1000万ドル以上を稼ぎ上げたというものである。
 
クレジットカードには、安全対策のためにCvv2コード(カード裏の3桁の番号、アメックスでは表の4桁の番号)が記載されているが、このCvv2コードまで盗まれてしまうと、オリジナルと全く同じカードを複製することができる。
 
昔は、クレジットカードは店舗で店員に手渡して使われることがほとんどだったのだろうが、今はネットショッピングにおけるオンライン決済として使われることも多い。したがって、オリジナルと同じ形状のカードを作成しなくとも、カード情報だけで十分悪用できてしまう。
 
カード情報が盗まれる場所という点では、小売店やレストランが危ないとされている。レジでキャッシャーがカードを数回スリップさせたようなら、要注意である。一回目は正当な決済のため、二回目は自身で持ち込んだ読み取り機を使った可能性があるからである。
 
特にレストランは危険だ。あるリサーチによると、カード情報の盗難事件の70%を占めるという。なぜか?それは、レストランでは、ウェイター(またはウェイトレス)がカードを受け取り、我々の目の届かないところで決済処理が行われるからである。
 
カードを使うのが有名店だから、チェーン店だから安心かというとそうではないので厄介だ。これまで、名の知れた店やレストランにおけるカード情報の盗難事件も多く発生している。
 
併せて、これはATMマシーンによく見られるものだが、ガソリンスタンドなどのカード挿入場所にカムフォラージュする形で偽の磁気読み取り装置を取り付けておき、いくつものカード情報を集めてからそれを取り外し、後でコンピューターでカード情報を入手するという方法もかなり前から報告されている。(次回に続く)

2010/7/7 水曜日

保証金に関するスキーム

Filed under: 調査コラム — yamaga @ 0:17:35

保証金に関するスキームとして、最近注意が促されている手口にこのようなものがある。
 
被害者はインターネットで賃貸物件を探している人達。ネット上のサイトで良い物件を見つけ、物件の管理者に連絡を取ると、他にも興味を持っている人がおり、部屋をホールドしておくためには、すぐに保証金を支払ってもらう必要があるとのこと。慌てて送金するものの、それ以降、物件の管理者とは連絡が取れなくなり、実際に現地を訪れてみると、全く無関係の第三者が住んでいるというものである。物件の管理者が「チャリティー活動のため」に海外にいるという口実で、海外に送金させる手口もあるそうだ。
 
実は、私も東海岸から西海岸に移り住むとき、アパートを探す期間のモーテル代を節約するために事前にインターネットで部屋を見つけておいたことがあったが、連絡を取った管理者のいくつかから、かなりの保証金を求められたことを覚えている。
 
また、このようなスキームも報告されている。最初の例と似ているが、ここで被害者となるのは賃貸希望者ではなく、物件の管理者。当該物件に興味があるという者から連絡があり、物件の管理者は保証金として小切手を受け取る。ところが、金額は多めに記載されており、賃貸希望者は返金を求めてくる。管理者は差額分の返金を済ませるが、その後、最初に送られてきた小切手が偽造だったことに気付くというものである。
 
最初のケースのように、実際に物件を見ないで保証金を払う者というのはそう多くはないかもしれない。では、こんな手口だったらどうだろうか?これは、私のところにも相談が寄せられているものである。
 
あなたがアメリカに住むことになり、生活に不可欠な車を購入するとしよう。以前から欲しかった車が格安でネットにポストされているのを見つけ、まずは状態を確認しようと出品者にアポを取る。当日、指定された閑静な住宅地にある一軒家を訪れると、敷地内に車が置かれてあり、そこで車のコンディションをチェック。購入することにする。色々と手続きもあり、引渡しは数日後に同じ場所でということにして、その場で保証金を支払う。ところが、いざ引渡しの日に同じ場所に出向いてみると、車はなく、不思議に思ってドアをノックしてみると、事情の分からない現住民に怪訝な顔をされる・・・というものだ。この手口では、犯罪者は空き家や留守がちな家に無断で車を停めて、さもその家の住民であるかのように振舞い、保証金を騙し取るのである。
 
「なぜ車両ナンバーを控えておかなかったのか」等々、部外者としての立場から事後にあれこれコメントするのは簡単だが、実際、当事者にそこまで求めるのは酷というものだろう。この手口の被害者は最近特に多い。十分に注意が必要である。

2010/7/1 木曜日

医療行為に伴う不正

Filed under: 調査コラム — yamaga @ 13:19:25

先日、ロスアンジェルス近郊のある美容整形医師が逮捕された。医療行為という名目の下、美容整形とは全く無関係の請求を患者と保険会社に対して行ったらしい。そして、請求額8万7千ドルのうち、5千9百ドルを不正に受け取ったとのことだった。この事件にはFBIだけでなく、歳入庁の犯罪捜査部も関わったとのことだから、容疑者も観念せざるを得なかっただろう。
 
実は、ここまで派手ではなくとも、似たような話は良く耳にする。特に日系医院に関しては、悪い噂が絶えないところも少なくない。あるロスアンジェルス近郊の日系医院については、日系人の間でこんなことが囁かれている。その医院では、現地の患者と海外旅行中の患者とでは、扱いが大きく異なるらしい。理由は、日本人旅行者が加入している海外旅行保険はハードルが低い、つまり、医師からの請求に対して寛大であるのに対し、米国内の健康保険のハードルは高いからである。従って、旅行者が来院するとろくに診察もせずに、すぐに高価な注射を勧める。一方、現地の住民に対してそんなことをしても保険が適用されないので、そこそこの治療を施して帰してしまうというのである(あくまでも噂だが)。
 
確かに、ちょっとした検査で病院に行くと、部分麻酔でもいいはずなのに、全身麻酔をさせされたりすることはある。
 
ちなみに、よく話題になるのだが、アメリカの日系人はなぜかいがみ合うことがあり、これは他の人種コミュニティーでは見られらない傾向である。例えば、韓国人コミュニティーなどは結束が強く、同胞に対しては何かと便宜を図ることが多い。これが日系社会ではどうなるかというと、いわゆる「ぼったくり」に遭ったりする。だから、ある程度英語が話せる日系人は、特別な理由がない限り、日系の店を利用したりしない。どうしてこうなるのか、こちらの日系メディアでも記事になることもあるのだが、本当に不思議である。
 
さて、話が逸れてしまったが、医療行為に伴う不正請求については、歯科医院についても同様のことが言える。例えば、歯に冠を被せるとしよう。最近は自然歯と見分けが付かないような、クリーム色の冠というものがある。当然、費用は高い。アメリカの歯科医院で診てもらうと、昔ながらの銀歯と最新のクリーム色の冠、選択肢が二つあるということを告げられ、前者のほうが費用が安いという説明を受ける。ところが、日系の歯科医院では、何の説明もなく、有無を言わさず高価なクリーム色の冠を入れられることになる。
 
私達は医療行為については素人だから、必要だと言われれば従うしかない。ただ、専門的で素人には分かりづらい分野であるということに付け込んで、不正な金額を請求するというのは、許されることではないだろう。

2010/6/22 火曜日

不法移民

Filed under: 調査コラム — yamaga @ 0:13:33

ご周知の通り、道路や公立学校の建設、治安維持、一部交通機関の運営といった公共サービスの財源は、納税者によって収められた血税である。そして、その利益を享受できるのは、基本的に納税者やその家族だけのはずである。そんな当たり前のことが、ここアメリカでは制度として確立されていない。
 
この国では、不法移民の子供が堂々と公立学校に通っている。日本的な感覚では信じられないかもしれないが、当該学区に居住していることすら証明できれば、こちらではどんな子供でも公立学校に入学することができるのである。余談だが、そういった生徒には英語が話せない者も多く、授業どころではないこともあるらしい。
 
先日、こんなニュースがあった。ファーストレディーがある小学校を訪れ、子供達に囲まれて話をしていたところ、そのうちの一人が「オバマ大統領は不法移民を追い出そうとしているって聞いたけど」と述べた後、「うちのお母さんは不法移民だし…」と呟いたのである。
 
大学についても同様で、こんな話題もあった。こちらの大学では、自州内に一定期間住んでいる学生については、学費が割引されるのが一般的である。州税を払ってきた州民が、その恩恵にあずかるのは当然ということだ。これに対し、他州出身の学生が不満を口にした。州内に住んでいるというだけで、税金すら払っていない不法移民の学生が学費の割引制度を利用できるのは不公平というのである。まあ、もっともな議論だろう。
 
私のオフィスの近くに、新しく出来た立派な公立学校がある。ロバート・ケネディーが暗殺されたアンバサダーホテルの跡地に建てられたものだが、毎朝、多くの中南米系移民の子供が通学するのを見て、あの中に不法移民はどれくらいいるのだろうか?と思うことがある。全ての不法移民がキャッシュで報酬を受け取っているということはないだろうが、納税義務を果たしていない不法移民の子供が公立学校に通うというのは、どう考えてもタダ乗りとしか思えない。
 
今、アメリカでは不法移民問題がホットだ。きっかけとなったのは、アリゾナ州で地域の警察官が不法移民を取り締まることを規定した法律が成立したこと。「不法」なのだから、取り締まって何が悪いと思われるかもしれないが、これにはアメリカならではの問題が関係している。
 
まず、アメリカは移民のフロンティア・スピリットによって発展してきた国である。そして、現在も、不法・合法を問わず、移民の労働力がアメリカ経済を支えているという側面は否めないということである。単純に不法移民だから追い出せというようにはいかないのである。
 
また、アメリカは地方自治が発達した国であり、各州が独自の法制度を有している。警察については、日本のように一元化されたものではなく、市、郡、州、そして連邦政府のそれぞれに法執行機関が設置されている。分業化が進んでいると表現したほうが分かりやすいかもしれない。移民法というのは連邦法であり、連邦政府の管轄ということになる。そして、同じ連邦機関でも、不法移民の取り締まりについては、移民局のICEが唯一の法執行機関だ。これはたとえFBIであっても直接関与できない分野なのである。
 
にも関わらず、今回の法律で、アリゾナ州内の地域警察官に不法移民を逮捕する権限が与えられることになった。連邦政府が管轄している分野に地域警察が口を挟むべきではないというのも批判の一つである。
 
不法移民が多いロスのような場所に住んでいると、嫌でも移民問題について考えさせられることが多い。不法移民を容認するかどうかは別として、「タダ乗り」が許されるようなことは絶対にあってはならないと思う。
 

2010/6/15 火曜日

企業の機密情報 3

Filed under: 調査コラム — yamaga @ 0:01:35

その他、よく機密情報保護を目的として、この種の情報をトレードマークやコピーライトのように登録することはできないのか?と聞かれることがあるが、基本的にそのようなシステムは、少なくとも米国の連邦レベルでは存在しない。
 
企業機密漏えいに関する裁判において、容疑者側の主張としてありがちなものは、焦点となっている情報は「盗んだ」ものではなく、あくまでも独自の情報(技術、ノウハウなど)であるということ、そして、当該情報が保護されていないということである。従って、こういった事態を想定し、日頃から企業機密を慎重かつ適切に扱っておく必要がある。保護されていない情報は機密とは判断されないからである。
 
企業はあくまでも利益追求集団であり、全ては損得勘定に基づいているはずだ。細かい点や派生的なケースは無視してあえて単純な話だけをすると、例えば、1000万円を生み出す価値のある企業機密があるとしよう。当然、この機密を保護するために、2000万円の経費をかけるのはナンセンスである。また、既存の情報保護システムを鑑み、当該機密を入手するためには高度なハイテク装置が不可欠で、1500万円の経費をかけなければこの機密を入手できないというのであれば、攻撃を受ける可能性は低いだろう。
 
実際には、ここに発覚のリスクという要因も関与してくることになるから、企業機密情報の保護については、情報の価値、保護対策にかかる経費、そして情報を入手するための経費(+リスク)を分析し、バランスのよい対応が求められるということになる。攻撃側の手法を十分に理解しておくことも大切なポイントである。
 
産業スパイに関しては、20年以上も前に出版されたものだが、落合信彦著の「スパイゲーム」という書籍がある。まあ、真偽の程はさておき、当時の私企業間における諜報活動と当局側との駆け引きが描かれており、参考情報としては悪くないものである。
 
企業機密の漏洩対策には、法令や攻撃側の手法、最新のテクノロジーを含め、幅広い知識とそれらを総合的に分析できる能力が求められる。私は調査の仕事をしているので、個人的には特にCIと産業スパイの境界線を越えてしまうことのないよう、心掛けている。

2010/6/10 木曜日

企業の機密情報 2

Filed under: 調査コラム — yamaga @ 3:18:53

情報を入手する方法には様々なものがある。いかにもマニアが好みそうな、スパイ映画ばりのハイテク装置も実際に存在し、ガラスの振動を探知して室内の会話を聞いたり、オフィス内に置かれたパソコンの画面を遠隔地で再現するようなことも可能らしいが、企業秘密というのは、もっと身近なところから漏れることがある。
 
私のある友人は化粧品会社の営業員として働いていたのだが、先日、別の化粧品会社へ転職した。同じような業界の中で職を変えるのはごく普通のことだろう。ただ、新しい職場において、以前の会社の顧客や営業方法について上司からしつこく聞かれて困っているという。雇ってもらっているという引け目もあるし、こういったところから情報が漏れてしまうということは珍しくないのではないだろうか。
 
また、プロは架空の求人広告を出したり、ヘッドハンティングの話を持ちかけたりしてライバル企業の従業員に対して「面接」を行い、その会話の中から企業機密を引き出したりもする。
 
その他、開発エンジニアなど、技術畑の従業員から企業機密に関する情報を入手するという方法が用いられることもある。一般的に、実際にプロジェクトに関わっている専門職者などは、単純に職業的な探究心から仕事に没頭していることが多く、こういった人達は何の悪意もなく、研究成果を自慢したり、研究に関わる情報を他の技術者と共有することに抵抗を感じないものである。
 
情報の流出を100%防ぐことは難しいが、特にこういった技術畑の従業員を中心に教育を施したり、新規雇用者や退職者に対しては、企業情報の開示を禁止する確認書にサインさせたり、退職後、一定期間は同業他社で働かない旨に合意させておく必要があるだろう。但し、この種の確認書の法的な拘束力については、別途考慮しなければならない。
 
機密漏えい調査について企業の方と話をすると、これだけ注意が促されているにも関わらず、今だに情報漏えい防止に関する条項を雇用契約に加えていない企業が多いことに驚かされる。そういった僅かな手間を惜しんだために、後で大きな代償を払わされることになる。漏えいの兆候について興奮気味に話をされた後、「雇用の際、何か企業機密に関する条項にサインさせましたか?」と尋ねると、「そこなんですよね.・・・」と言葉に詰まってしまう担当者の方が多いのである。
 
(次回へ続く)

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