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調査コラム

2012/1/17 火曜日

不法手口による違法滞在

Filed under: 調査コラム — yamaga @ 9:54:15

海外で生活をされたことのない方はピンとこないかもしれないが、観光を目的とした短期滞在と違い、海外、特にアメリカで生活をすることは簡単なことではない。当然だが、我々はアメリカでは外国人であり、外国人が他国で生活するには、査証(渡航・滞在許可証)が必要だからである。よく、引退後はハワイで余生を過ごしたいという話を耳にするが、残念なことに、そういった夢を諦めなければならない人も少なくない。

査証があるからといって、何の制限もなく生活ができるというわけではない。観光のみを目的としたもの、学校に通うことはできるが、就労はできないもの、特定の会社でしか働くことができないもの、雇用主の制限はないが、有効期限に制限あるもの等々、査証には様々な種類がある。この範囲を超えて生活をすれば、違法ということになる。

テロの問題もあり、アメリカで査証を得ることは益々難しくなってきている。そこで皆、あれこれと抜け道を考える。まずは観光査証の複数利用。比較的審査のハードルが低い「観光訪米」を繰り返すことにより、実質的な長期滞在を実現させようというものだ。ただ、移民局もこの辺りの事情をよく把握していて、一定期間に何度も出入国を繰り返している者は再入国を拒否されることになる。

そして職種の偽装。移民法は弁護士でも混乱する分野なので、詳細や一般的ではないケースは割愛するが、普通、アメリカで就労査証を得るためには、その職種がアメリカ人の雇用機会を奪うものではなく、かつ専門的なものでなければならない。ありがちなケースはこのようなもの。例えば、アメリカの日系企業が受付兼電話番として人材を求めているとする。日系コミュニティー向けにビジネスを営んでいるので、やはり日本語を完璧に理解できる日本人が好ましい。ところが、受付担当ということでは専門職とみなされない。そこで、査証上は「会計スペシャリスト」ということにしておいて、実際には受付担当として就労させるというものである。

移民局が社内部のことなど知る術はないだろう・・・と高をくくるのだろうが、彼らを甘く見てはいけない。顧客のふりをして電話をしたり、突然会社を訪問して名詞や仕事の資料の提示を求めたり、様々な方法で実態を確認しようとする。どこからか社の内報を入手することすらある。査証上「会計スペシャリスト」ということになっている従業員が新人として内報で紹介されていて、そこでの肩書きが「受付担当」ということになっていれば、移民局は捜査を開始する。

公開情報も移民局が好む情報ソースである。ホームページに掲載されている従業員の集合写真なども定期的にチェックされている。それからソーシャルネットワーキングサイト。ある営利団体が情報公開法によって得た移民局の内部通達資料では、不法滞在が疑われる者の情報をソーシャルネットワーキングサイトを通じて入手する方法が推奨されている。身分を伏せた上で友人登録させ、日々の様子を探るのだ。この方法は偽装結婚による査証の不正入手にも効果があるとのこと。アメリカ人との婚姻により査証を得たはずなのに、ソーシャルネットワーキングサイトにおいて、ボーイフレンドとされる別の男性と写った写真が掲載されていたりすれば、捜査の対象になるらしい。

このご時勢、ネット社会でのロープロファイルは不可欠なのかもしれない。

2011/12/21 水曜日

記録の重要性 -後編-

Filed under: 調査コラム — yamaga @ 2:07:09

記録が重要な役割を果たすのは、何も証言証拠についてだけではない。物的証拠とて、証拠の保管、受け渡しに関する正確な記録がなければ、その証拠能力が疑われる。これについては、以前のコラム「管理の認証」を参照されたい。

こんな話をすると、「記録なんて、でっち上げることもできるじゃないか」「適当な記録を作って、その内容が正しいといえばいいじゃないか」という声が聞かれることがある。確かにそうかもしれない。だが、真実であることを誓った上でなされた供述や記述が実は虚偽であることが後に明らかになった場合、とても面倒なことになる。

併せて、裁判では様々な点について吟味されるし、記録というのは、裁判の行方を決める指針の一つにすぎない。また、不思議なもので、捏造された記録というのは、どこかでつじつまが合わなくなってしまうものである。

先日、ロス市警で交通違反チケットに関する内部通達があった。これまで、違反チケットを発行した警察官が当時の様子を思い出すことができず、公判で証言することができない場合、事件を取り下げる(お咎めなし)ということが慣例になっていた。違反事案について審理される公判において、担当警察官がその詳細を語ることができないのだから、当然である。従って、チケットを発行された違反者側としては、出来るだけ公判期日を先送りし、警察官の記憶が薄れていくのを待つというのが対抗策として知られていた。

ところが、これを良しとしない裁判所が、今後、記憶の欠如を理由に交通違反事件が取り下げられた場合、当該警察官に懲罰処分を与え、記憶が定かではない場合には、警察官は当時の記録を基に証言しなければならないという方針を打ち出した。これは、裁判所が記録の信頼性を認めているがゆえの判断である。警察官の記憶は薄れていても、当時記した記録は残されているわけで、その記録の内容は正しいとみなされるというわけだ。

記録には正式なレポートだけではなく、フィールド・ノート(調査員が現場で書き記したメモ)も含まれる。私達PIも、裁判所から証言を求められた場合、必ずノートの有無を聞かれ、記録が残っていれば、相手側の弁護士からその開示を求められることもある。これは、私達の記憶に基づく証言と調査実施時に作成した記録との矛盾点を探るためである。

裁判は合理的な理由を示し、自分の主張が正しいということを陪審員に納得させるための駆け引きの場であるともいえる。それが事実であろうとなかろうと、よりアピールできた者が勝利する。これは裁判所が真実を明らかにする場として機能していないと批判される理由の一つであり、弁護士が高い報酬を得ることができる理由でもあるが、とにかく、説得力のある材料をいかに多く提出できるかによって勝敗が決まるのである。そういった意味でも、詳細な記録を残しておくことは大切なことであり、我々のような業界に身をおく者は常に意識しておかなけばならないことだと思う。

2011/11/29 火曜日

記録の重要性 -前編-

Filed under: 調査コラム — yamaga @ 2:51:57

調査において最も重要なことの一つは、作業の一部始終を書面として記録しておくことである。なぜか?それは、特に裁判で争われるような案件では、書面として残された記録は調査で明らかになった事柄の信憑性を補強するという役割を果たすからである。

書面には人を納得させる効果があるそうだ。以前、ある交渉テクニックの本を読んでいたときに、交渉相手を説き伏せるためのツールとして書面を用いる方法が書かれてあった。人というものは、その内容もさるものながら、もっともらしい書面を見せられると、その内容を信用してしまう傾向があるらしい。私は高価な買い物をするとき、必ずより安い値段が掲載された他業者の広告を持参し、これを店員に見せてベストの価格を引き出すようにしている。不思議なもので、口頭で他業者が出している値段を伝えるより、実際の広告を見せたほうが効果がある。また、容疑者から自白を引き出す際にも、ただ口頭で説得を試みるのではなく、何か材料になりそうなものを見せながら話を進めたほうがよい。

記録を残す場合は、詳細かつ正確に行うということも大切なポイントである。

こんな単純な事例について考えてみよう。誰かが社の倉庫から在庫品を無断で持ち帰った。監視カメラはなく、セキュリティーのチェックポイントでも不審者は確認されなかった。この事件には物的証拠はなにもないが、後に目撃者がいることが分かった。インタビューを実施し、その記録が裁判所へ提出されることになった。

もし、提出された記録にインタビューを実施した場所や日時の記載もなく、「分かりやすくするために」内容が調査員によってまとめられていたりしていたら、どうだろうか?

一方、場所と日時も分刻みで記載されており、インタビューの内容も一問一答形式で目撃者の表現が全てそのまま掲載されていたらどうだろうか?インタビューの内容が録音された場合、冒頭部分では、日時と実施者、被聴取者の氏名、生年月日、住所、録音の承諾についてきちんと口述されていたらどうだろうか?

司法の場において、どちらの記録の信憑性が高いと判断されるかは明らかだろう。

ちなみに、明白な物的証拠が存在しない場合、被害者側にありがちな不安として、証拠がないのだからどうせ信じてもらえないだろう、加害者側の視点では、どうせ証拠がないのだから自分が犯人だと断定できるはずはないだろう、というものがある。しかしながら、これは必ずしも正しくない。証言証拠のみに基づく起訴、有罪判決が可能かということは別のトピックになるのでここでは議論しないが、適切な知識に基づき、正確に記録されたレポートをもってすれば、物的証拠の欠如すら補い、案件を有利に運ぶことも不可能ではないのである。

2011/11/10 木曜日

インタビューや尋問による情報収集

Filed under: 調査コラム — yamaga @ 11:03:17

ウサマ・ビンラディン氏が米国海軍特殊部隊の襲撃を受けて殺害された。この人物たった一人を見つけ出すために、アメリカは巨額の予算をつぎ込んできたわけで、納税者としては複雑な心境ではあるが、他諸国の冷ややかな反応とは対照的にアメリカは大騒ぎだった。

10年に及ぶ大捜索には、アメリカの意地にも近い執念が垣間見れる。他国の主権など全く無視し、自国の軍隊を外国に派遣。多くの民家も隣接する場所で派手な銃撃戦を行い、ビンラディン氏を殺害して意気揚々とその場を立ち去った。それを「Justice(正義)」と言い切るアメリカへの批判が高まっているようだが、そういった批判は、テロとは無関係の地で、メディアを通じて事件を追っている者の綺麗ごとかもしれない。私も911の同時テロの後、ワールド・トレードセンターの跡地を訪れたが、あの凄まじい状況を実際に目にすれば、今回のアメリカの行動は理解できないこともない。

さて、ビンラディン氏の死去を受け、元軍の尋問官であるマシュー・アレキサンダーという人物のコメントを聞く機会があった。ブッシュ政権時代、アメリカ軍やCIA による拷問が問題視されたことがあったが、アレキサンダー氏は拷問を否定する。理由は単純で、彼は拷問によって期待する情報を得ることは難しいと考えているからだ。よく映画などで、脇役程度の者が悪者に捕まって拷問を受け、散々痛めつけられた挙句、最終的に機密を漏らしてしまう…というシーンを見ることがある(大抵、主役のヒーローはどんなに拷問を受けても口を閉ざしたままだ)。こんな拷問シーンを見て、「嘘でもいいから、適当なことをしゃべってしまえばいいのに…」と感じたことはないだろうか?アレキサンダー氏によると、実際にそういったこと、つまり、拷問の痛みから逃れたいがために、意図的に虚偽情報を口にする者もいるらしい。だから、得られた情報は鵜呑みにせず、必ず他のソースから得られた情報と照らし合わせ、その信頼性を査定するようにする。

また、機密情報のごく一部だけを語り、肝心な部分は伏せたままにしておくというようなこともあるらしい。今アメリカが戦っているのは、自爆テロすら恐れない集団である。死をちらつかせたところで、彼らの態度を変えさせることはできない。

結論は、インタビューや尋問においては、相手と協力的な関係を築かない限り、有益な情報を得ることはできないということ。脅したり、力でねじ伏せるようなやり方には限界があり、威圧的な態度は避けるべきということのようだ。

我々が普段行うのは尋問ではなく、インタビューということになるだろうから、特にこのことは当てはまると思う。インタビューは調査において非常に大切なプロセスである。インタビューというと、容疑者へ対するものが目に付くが、それだけではなく、関係者への聞き込み調査も大切なインタビューの一つだ。あらゆる手を尽くしても得ることのできなかった情報であっても、人を介することによって簡単に入手できてしまった経験をされた方も多いのではないだろうか?

併せて、色々な意見があるだろうが、インタビューで効率よく情報を引き出すには、心理的な駆け引きに長けていなければならない。例えば、犯罪者的な気質を持つ者を相手にする場合、彼らは最初の段階で力関係を査定してくるので、こちらが下手(したて)に出ることが裏目に出ることもある。その辺りの加減を調整しながら作業を進めることも大切だろう。

2011/9/23 金曜日

横領と労災保険詐欺

Filed under: 調査コラム — yamaga @ 5:31:26

先日、ある政府筋からの依頼案件で、次のようなものがあった。例によって、労災保険詐欺ということになるが、普段、私が扱っているものとは少し違った内容だった。

対象者は50歳代の男性。当該政府の職員であり、いわゆる公務員ということになる。ところが、この男性は横領事件を起こし、解雇されてしまった。私達のところに相談があった段階では、横領事件そのものは警察機関によって捜査が行われていたため、横領に関する詳細は定かではないが、かなりの額だったらしい。雇用主が政府関係ということもあり、事件は刑事司法の場で審理されることになった。この男性は実刑判決を受け、あとは収監を待つばかり…のはずだった。

興味深いことに、解雇される数週間前、この男性は勤務中に負傷したということで、労災を申請していた。次にこの男性が言い出したことがお分かりだろうか?彼は、怪我が深刻であるために刑期を務めることができないと主張したのである。そして、人を疑うことに慣れていない若い裁判官はこれを認めてしまい、まんまと対象者に入所期限の延期を許してしまった。

この男性は、観光で成り立っている、海辺の小さな町に住んでいた。住民同士は皆、顔見知りというような土地柄である。ローカルなトピックは小さなことでもすぐに話題になると読んだ我々は、地元のメディアを片っ端から調べることにした。すると、この男性が妻と共にあるギフトショップを買い取り、新装オープンしたという記事が見つかった。別途、記録を調査した結果、確かに対象者とその妻がギフトショップのオーナーであることも判明した。

あとは、対象者に「店は経営しているが、(怪我をしているから)実際に店先で働いているわけではない」と言い逃れをさせないための証拠を集めるだけである。

まずは予備調査。別の従業員が店番をしている際に訪問。さりげなく、対象者が店先で働くこともあること、そしてその曜日や時間帯を聞き出す。

そして次は、彼が実際に働いている様子の記録である。通常、このようなケースでは、いわゆる隠しカメラのようなものを持って店へ入り、撮影するということも行うのだが、今回は店のオーナーが対象者である。いくらギフトショップ内とはいえ、対象者の占有地内であるため、万が一のことを考え、120%パブリックなスペースから撮影を行った。もちろん、対象者の動作が怪我のために制限されているような兆しは微塵も見られなかった

現在、この事件は、刑期逃れ、そして、労災保険詐欺の両面から捜査中である。私もいずれ裁判所へ呼ばれ、証言しなければならないだろう。

2011/9/12 月曜日

資格要件

Filed under: 調査コラム — yamaga @ 1:27:43

仕事やライセンスを得る際、候補者には要件としていくつかの資格が求められるものだが、この資格に関する不正が問題になることがある。以前、ある女性が偽装結婚によりアメリカ市民権(アメリカ国籍)を得て、FBIやCIAの求人に応募。全てのバックグラウンドチェックをパスして採用され、職務に従事していたことに触れたことがある。連邦政府の職員はアメリカ市民でなければならず、その市民権自体が不正に得られたものであれば、当然、職員としての地位も無効になる。

日本でも高卒者向けの採用試験に合格して勤務していた公務員の中に、大卒者が含まれていたことが問題になったことがある。大卒者向けの試験の競争が激しいため、大卒であることを隠して高卒者向けの試験を受験していたらしい。

今、アメリカでホットな話題となっているのは、オバマ大統領の出生地問題である。再選に向けて動き出した大統領に対し、不動産王として知られるトランプ氏が噛み付き、オバマ氏の出生地問題が再び取り沙汰されるようになってきた。

大統領選の立候補においては、アメリカでは「出生地主義」が採られている。アメリカの大領領になることができるのは、アメリカの地で出生して市民権を得た者でなければならず、例外はあるが、後に帰化した者やアメリカ人の両親の下に外国で生まれた者にはその資格はない。そして、オバマ氏は実はハワイではなく、ケニヤ生まれであるため、そもそも大統領になる資格はないという根強い疑惑があるのである。それにしても、ライバルの弱点を徹底的に洗い出し、僅かでも汚点や疑惑があれば執拗に責め立てるという大統領選の戦略には、いつもながらうんざりさせられる。

ちなみに、アーノルド・シュワルツェネッガー氏は、先日までカリフォルニア州の知事を務めていた。彼はアメリカ市民権を持っているが、アメリカ生まれではない。だから、州知事になることはできても、大統領になることができない。もし資格が認められるのであれば、政治欲の強い彼が大統領選に出馬しないわけはない。

さて、こういった疑惑を鎮圧するため、オバマ陣営はあれこれと策を講じている。そのうちの一つは、オバマ氏の出生証明を誰でも入手できるようにするという法案。費用は100ドルらしい。

普通、出生証明は地方自治体が独自のフォームの下に受理・発行している。パスポートや各種ライセンスを得る際に提示を求められることがあるから、出生証明の入手は限定されている。もちろん、ID詐欺に悪用されてしまうからだ。それを100ドルと引き換えに誰彼構わず発行してしまうというのだから、驚きである。

とはいえ、大統領の出生証明を不正に入手して、大統領に成りすまそうなどと考える者はいないだろう。通常、10−20ドル程度のものを100ドルで売りつけるのだから、ハワイ州の財政にも貢献する。オバマ側、ハワイ州側、どちらにもメリットがあるというわけで、悪いアイデアではないのかもしれない。

2011/8/22 月曜日

罠(エントラップメント)

Filed under: 調査コラム — yamaga @ 4:51:52

以前、態度の悪い従業員を解雇するために、勤務中に意図的に酒を飲むように仕向け、飲酒運転で警察へ通報してしまうという策略について触れたことがある。

また、これは明らかに違法だが、障害保険の詐欺調査の一環として、わざと容疑者の車をパンクさせておいて、タイヤを付け変える様子を記録することにより、障害の程度が本人の主張と食い違うことを証明するというようなことについても触れたことがある。一方で、先日、私が扱う労災保険詐欺事件において、サイドビジネスで出張洗車サービスをしている容疑者を調査員の知り合い自宅に呼び、洗車する様子を別の調査員が記録するという調査を行ったことがある。

道義的な問題は別として、これに似た調査方法は警察機関でも採用されている。

身近な例では、交通違反キップ。日本の交通ルールは分からないが、こちらでは、信号のない横断歩道で歩行者が渡ろうとしている場合、例え歩行者が立っているだけでも、運転手は横断歩道の手前で車を停止させなければならない。そこで警察官は、意図的にダミーの歩行者を横断歩道の傍に立たせておいて、停止せずに横断歩道を走り去る車を取り締まったりする。

自動車盗難の取り締まりについても同様だ。まず、一般ドライバーになりすました警察官が自動車の盗難が頻繁に報告されている治安の悪い地域へ車を走らす。それを仲間の警察官がパトカーで追いかけ、停止させる。いわゆるトラフィック・ストップだ。このパフォーマンスよって周囲の目を引かせる。そして、警察官はドライバーを逮捕し、パトカーで連れていってしまう。車は現場に残したままにしてである。しかも車のドアは施錠されておらず、キーは付けられたままだ。その後、犯罪者がこの車に近寄って乗り去るのを、別の警察官がひたすら待つ。他のバージョンでは、適当なショッピングモールの駐車場に車を置き、車を離れるときにわざとキーをドアに付けたままにしておき、犯罪者を誘うというものもある。この車にはGPSや隠しカメラが取り付けられており、遠隔操作できるようにもなっている。ドアも自動的にロックされてしまう。犯罪者が車に乗りこみ、走り出してみたところで、車はすぐに停止してしまい、中に閉じ込められて御用になるというわけだ。

アメリカ人は、こういった手法を好んで使う。ニューイヤーズデーのときは、たくさんの捜査官が客を装ってバーに入り、酒を飲んで帰宅しようとする運転手をたくさん逮捕したらしい。その他、売春についても、魅力的な女性警察官が売春婦になりすまして街に立ち、掛かってくる男性を取り締まっている。

諸制限があるにせよ、こういった手法が堂々と認められているのだから、全く驚きである。エントラップメントにより「唆されて」罪を犯した者に、その責任を負わすことができるのかについては色々な議論があるが、抑止力という点では、確かに効果があるのかもしれない。

2011/6/27 月曜日

ジェームズ・バルジャー (James J. Bulger)

Filed under: 調査コラム — yamaga @ 0:58:49

逃亡中のギャングの大物、ジェームズ・バルジャー (James J. Bulger)が逮捕された。数日して、日本でも報道がなされたくらいだから、相当のものだ。以前のコラム(http://i2bconsulting.com/blog/?p=41)で触れた通り、10年ほど前に、私はニューヨークでこの人物を追っかけていたことがあるので、何とも感慨深い。しかも、潜伏していたのは、ロス郊外のサンタモニカである。朝と夕方には散歩にも出ていたとのこと。サンタモニカは私がよくランニングするビーチでもあるので、どこかで見掛けていたのかもしれない。まさか・・・である。ちなみに、報奨金は200万ドル(約1億6000万円)にまで跳ね上がっていた。

Time Theft (時間の窃盗)

Filed under: 調査コラム — yamaga @ 0:19:00

僅かながら失業率の改善も報告されているようだが、アメリカは、今だに不景気から抜け出すことができない状態が続いている。そんな中、活気があるのは、直接的な収入を増やすのではなく、経費を削減するためのビジネスだ。私が扱っている労災保険詐欺の調査もその一つ。雇用主や保険会社は新規顧客の獲得が難しいため、悪質な不正受給ケースを摘発し、保険料や保険金の支払いをセーブすることで生き残ろうとしている。

プラス要因を増やすのではなく、マイナス要因を削減するというこのコンセプトにおいては、従業員の働きぶりもその対象の一つとなる。以前、ある従業員が個室を与えられていること悪用し、勤務中に業務用のデータベースを使い、自身のサイドビジネスのためのリサーチを行っていたり、所属している教会のための仕事をしていた事例について触れたことがある。また、従業員が職場にて、かなりの時間を私用目的のインターネットに費やしてしていることが問題視され、話題になったこともある。もちろん、こんなことが続けば、就労時間に対して報酬を支払っている雇用主はたまったものではない。

こういった行為は「Time Theft(直訳すると「時間の窃盗」)」と呼ばれ、最近はこれに関するサービスを提供する業者が目に付くようになってきている。ハード、ソフトの両面からコンサルティングを行い、勤務時間中は従業員に100パーセント職務に集中させようというわけだ。こういった業者の営業文句によれば、従業員は週あたり、4−5時間を雇用主から「盗んでいる」とのこと。

といっても、私が見聞きした限り、この種の業者の主力武器は生体情報を用いたタイムカードシステムのようである。旧来のタイムカードでは同僚によって不正にタイプされてしまうことがあるため、本人のみが出社、退社を記録できるように、手の形や指紋など、生体情報を認識できる装置を使うのである。

これだけでは完全にTime Theftを撲滅できないし、抜本的な解決策となっていないことは誰の目にも明らかなわけだが、 まあ、そのための一手段としては、悪くはないだろう。

ただ、このシステムの利点としては、適切なソフトウェアを併用することにより、従業員の勤務傾向を瞬時に分析し、タイムカードの押し忘れや不正の兆候に気付くことができるということが挙げられる。カリフォルニア州にも一定時間働いた従業員には休憩時間を与えなければならないという法律があるが、この法律を遵守するという意味でも、効果を発揮するかもしれない。

従業員による不正というと、何かと対策ばかりが並べ立てられがちだが、一方で、性悪説に基づき、監視の目を光らせ、従業員を徹底的に締め付ければよいかというと、もちろんそんなことはない。こんな事例をご紹介しよう。ロスにある日本食レストランがあった。伝統的な和食レストランで、従業員のモチベーションも高く、ハリウッドの著名人も頻繁に訪れるような店だった。ところが、景気の悪化に伴い、日本人オーナーはそのレストランを手放すことになった。そこを買い取り、引き継いだのは韓国系アメリカ人。彼は従業員を一切信用せず、調理場をはじめ、レストラン内のあちこに監視カメラを計数十個も設置し、従業員の仕事ぶりを隅々まで監視した。結果、腕のよい料理人は次々と辞めてしまい、とうとうその店は潰れてしまった。

何事もバランスが大切ということだろう。

2011/6/7 火曜日

偽薬

Filed under: 調査コラム — yamaga @ 0:28:49

先日、インターネットで偽薬を販売していた男性に有罪判決が下った。この男性、北米では認可されていないDCAという癌の治療薬をネットで販売したとのこと。私も初めて知ったのだが、DCAというのは、2007年初頭にカナダの医師によって発表された試験薬で、癌の治療に効果があるらしい。癌と戦う患者、特に藁にもすがりたい末期患者にとっては、喉から手が出るほど欲しい薬なのだろう。

ところが、この男性が販売していた薬は、でん粉やブドウ糖、乳糖などで構成されており、DCAは一切含まれていなかった。これを、確認されているだけで65人の患者に販売。別途、商用ソフトウェアの海賊版を販売していたことも発覚し、逮捕されたというわけだ。

ACFEマニュアルにも記載があるが、体内に摂取される薬や食品に関する偽装というのは、本当に怖い。もちろん、直接健康に影響するからだ。今回の事件では、偽薬に毒性のあるものが含まれていなかったことがせめてもの救いだったかもしれない。とはいえ、癌という難病に苦しむ患者の追い詰められた気持ちに付け込み、悪事を働くというのは、何とも許しがたいことである。

個人的な話になってしまうが、私は小学校に入ったばかりの頃、母を癌で亡くしている。当時、癌は不治の病と考えられていた時代であり、せめてもの望みと怪しげな高価な薬を父が買いあさっていたのを覚えているので、この種の事件を見聞きするとやるせない気持ちになる。

認可されている薬だからといって安心できるとは限らない。よく話に聞くのは処方箋なしで購入できるダイエット薬。宣伝通り、確かに体重は減るらしい。そこに偽りはないのだが、食欲がなくなり、吐き気までしてくる有様で、これでは、毒を盛られているようなものである。

当然だが、命に関わるということになれば、人は手段を選ばず、どんなことにでも飛びつきたくなるものだ。ご存知の方も多いかもしれないが、こんなことが話題になったこともある。日本のある裏社会のトップが難病にかかり、移植をしなければ助かる見込みがないことが分かった。日本では到底不可能ということでアメリカで移植をということになったのだが、順番待ちの多くの患者がいることは、こちらでも同じである。そこで、手術を行う有名病院に多額の寄付をすることにより、順番待ちをしている他の患者達を一気に飛び越し、早々に移植手術を受けることができたそうだ。また、私の知り合いにも、政府の高官ということで、やはり優先的に移植を受けることができたという人がいる。不公平といってしまえばそれまでだが、世の中、そんなものなのだろう。

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